第8回よい音チャット

 

日時 2017年4月26日(水) 13:30~15:30

場所 NHラボ本社

テーマ 「温故知新、よい音プロジェクト」

参加者 相島彰徳氏(相島技研代表)

    草薙雅朗氏(アムトランス㈱代表)

    大槻建氏(アムトランス㈱顧問)

 

今から25年ほど前、中島代表の発案によりソニーの各部門から20名前後のメンバーが集まり「よい音プロジェクト」が発足しました。これは、CDが発売されデジタルオーディオが普及していく中、代表が「オーディオの次を目指してCDプレーヤやスピーカ、アンプを見直し、さらによい音を作るにはどうしたら良いかを考えよう」という研究会でした。メンバーはそれぞれ主業務を持っていましたが(机上か机の下かは別として)プロジェクトテーマも並行して考えながら時々集まっては熱いディスカッションを重ねました。プロジェクトの内容は別の機会に紹介できればと思ますが、今回のチャットにはこのプロジェクトメンバーだった3名に参加していただき、オーディオの昔と今、そして今後について“放談”していただきました。

 

紙面の関係で事務局(高田)の責任で抜粋編集しました。

参加者の氏名は略してあります。(例:中~中島代表 以下同様。)

 

よい音

 

: 「よい音」は定義が難しい。

 

: アンプやスピーカはいまだに分からないことが多いが、実際にはよく分からないそれらをつなげてシステムにしてい

   る。

 

相:アンプがきちんとしていないのにスピーカの音は判断できないだろうと考え、最近はもう一度アンプをやり直して

   いる。

 

大:よい音のための部品がない。世の中は、軽く、小さく、安くすることが最大の関心事。

 

相:昔はいいものがちゃんと作られていたように思う。ダイオードで体験したことだが、ショットキーバリアダイオードよ

 

   り普通のダイオードの方が音が良かった。

 

たまごスピーカ

 

中:自宅で試聴位置から2mくらい離れているテレビの音が聞き取りにくいので、最近外部スピーカとしてたまご

   スピーカを手元に近づけて聞いている。自分一人で聴くには具合良い。

 

大:たまごスピーカを借りて自宅で聴いたが最初に変な音に気づいた。調べると透明のアクリルの台の中の空気

   が共振して音を出していた。隙間に形状を変えられる保冷剤を入れて空間を埋めたら音がガラッと変わっ

   た。

 

相:たまごスピーカはキャビネットの振動が大きく、それによりスピーカターミナルが緩みビリ音が出ることがある。  

 

草:お客様からビリ音が出ているとのクレームがあり、よく調べるとターミナルのゆるみだった。

 

   たまごスピーカ再生時に手で持つと一番音が良かった。ヒトをモデルにした支えるもの(スタンド)を作ると良

   いのでは。

 

草:ダンパをなくせばもっと立ち上がりが良くなるのでは。マークオーディオのスピーカはダンパがなく立ち上がりの

   良い音がしている。ジョーダンワッツにいたエンジニアが開発した。

 

大:スピーカの無指向性のメリットはなにか。家で聴くときの位置は大体決まっている 無指向性スピーカで音を

   拡散する必要はない。指向性があるスピーカの方が聴取点にエネルギーが集まり音が良く聞こえる。

 

相:ONKYOのスピーカGS1はそのコンセプトで作られていた。

 

中:スピーカの後から出る音は直接聞こえない。一旦どこかに反射してから耳に届く。前が重要で、後ろはむしろ

   ない方がよいのでは。後ろ面は材料が発する音だけであり、それがどこかに反射してもっと悪くなってリスナー

   に

 

大:多くの人がBGM的に聞くには無指向性でいいというが、しかし家の中で聴くときは本当に無指向性がいい

   のだろうか?

 

相:私は家の中でも聞く位置を決めていない。いつもBGM的に聞いている。その状態で音の良し悪しを判断

   している。

 

高:指向性をつけるのは逆にむずかしいのでは?

 

大:つける必要はない。普通のスピーかでよいと思う。しかしあえて無指向性にする理由は何か?

 

高:たまごスピーカは特に無指向性スピーカを目指しているわけではない。あくまでもキャビネットをなめらかにし

   て、そのなめらかな面と同じ面が振動する状態にしたらどうなるか、が出発点だった

   いわゆる無指向性スピーカは360度方向に音が出るように作ってあり、店舗などで広いエリアに音が伝わる 

   ようにしている。

 

中:スピーカの直接音が一番重要。キャビネットの前半分は直接音に寄与しているが後半分は寄与しない。

   よって後半分はどうでもいいのでは。

 

大:その割にたまごスピーカは無指向性という言葉が先走っているのでは。

 

中:たまごスピーカは止むを得ず(結果として)無指向性的になっている。たまごキャビと同じ面から出さないと

   空洞ができ直接音が影響を受ける(よくない)放射音を乱さないためにも前半分は非常に重要だと思

   う。後ろ半分はむしろいらないと思う。

 

相:たまごスピーカを使いこなす皆さんのアイディアをホームページにアップしたらどうだろうか。

 

ヘッドホンとスピーカ

 

相:ヘッドホン(HP)で聞いている人たちは音源の音をつかんでいて(注:満足しているという意味か)、

   なかなかスピーカ(SP)で聴こうとしない。

 

大:ヘッドホンでよく聴こえるようにソースをそのように作り上げている。

 

相:それはまた別の問題。 同じソースでもHPとSPで聴き比べると、HPの方が良く聞こえる。昔のよい音プ

   ロジェクトでもそういう話が出た。SPは今からでもやるべきことはいっぱいある。

 

アンプ

 

大:オーディオシステムで一番問題なのはアンプ。

 

相:特にアナログアンプ。

 

大:アナログの方がデジタルに比べ圧倒的に難しい。

 

相:耳で聞いているのはアナログ。

 

大:アンプを開発するのにまず測定するが、測定データと音質は関係ない。

 

草:今はアンプの性能が向上していて、どれも測れるデータには大きな違いはない。商品の基準はちゃんとして

   いることを示すダメ押しのために測定するようなもの。

 

   そこからさ先の音は全く別世界。とてもデータで表せない。

 

相:私はデータを取りたいと思う。以前の二階堂ひずみ測定法などで耳に相関関係が強いひずみが測定でき

   たら良い。

 

草:元九州芸工大安藤先生の著書に、楽器の立ち上がり部分をマスクすると楽器の区別がつかなくなる。立

   ち上がり部分には楽器特有の不協和音が含まれており、楽器の特徴となっている。これに関連するが、ド

   イツ某メーカの無指向性スピーカはえも言われないきれいな音がするが聞いていて面白くない。スピーカの

   構造上入力に対して立ち上がりが悪くなるのが理由で、生の音楽と違うなり方をしている。しかし、世界中

   で結構売れているようだ。 「音が良い」というだけではだめなのだろう。

 

大:今は「ハイファイ」という言葉は使われない。

 

相:「ハイフィデリティ」ではどうか。私は、入ってきた音をそのまま出したい。

 

大:それは無理だろう。みんなきれいな音を好む。

 

大:とにかくアンプが良くならないとスピーカも録音も良くならない。

 

相:同感。最近アンプのフィードバック抵抗にvishay11000円もする抵抗を付けたら途端に音が良くなっ

   た。これはなんだというくらいびっくりした。

 

大:私もvishayの抵抗を使ったことあるが、音の線が細くなった。アンプ回路で一か所変えると、他の部分との

   関係が変わる。他のところも全部チェックする必要がある。

   音の悪いアンプは演奏者が可哀そう。凄く下手に聞こえる。

 

相:確かに、いいアンプは演奏を楽しく聞ける。ダメなアンプは下手な演奏に聞こえる。

 

   例えば、DAコンバータの良し悪しは音楽のスピード感が変化する。

 

大:音質が変化し、遅く聞こえると演奏の間が分かるようになる。演奏者はそれを意識して演奏している。

 

大:ピアノをたたいた時の輪郭が出ていないとだめ。

 

相:付帯音が付きまとうと輪郭が出ない。

 

草:コンデンサでも付帯音が出る。

 

大:測定しても出てこない。一番肝心なところのデータが取れない。

 

相:二階堂ひずみでそれがつかまえられるのでは。

 

草:高性能のリアルタイムアナライザである程度までは分かるかもしれないが、空間に放射されるとわからない。

   大脳生理学も考えなければいけないし、ひとの好みもある。

 

相:自分の好みは分けないといけない。

 

大:食べ物と同じで最終的に好みの問題はある。 

 

相:多くの人に聞かせてその評価を統計的に判断するべきでは。

 

大:それは非常に時間のかかることだ。音質と測定データはあまりにもかけ離れている。

 

中:本体の性能が良くないのでしょうがなくフィードバックをかける。あんなことをやっていてはまずいのでは。

 

草:新明和工業時代、上司に「電気屋は発想が貧しい。機械屋や航空機屋はすぐにフィードバックをかけたり

   しない。電気屋はなんでも電気でやってしまおうとするからおかしくなる」と言われたことがある。昔のよい音

   プロジェクトでCDを作ろうとしたとき、一番大事なのはメカだということが分かった。

 

電源とノイズ

 

大:NHラボの先日のセミナ―でバッテリーをとりあげていた。昔からバッテリーの方がACより音が良いことは分

   かっている。しかしなぜかは分からない。バッテリーの方がノイズが少ないというが、デジタルアンプのようにかな 

   りノイズを出しているものが、なぜこういう(いい)音をだせるのか?これについて何の解決もなされていな

   い。不思議だ。

 

相:昔ソニーの試聴室では、隣室においた発電機からオーディオ機器に電気を供給して試聴していた。ノイズ

   だらけの発電機なのに、その方がACより音が良かったことを思い出した。

 

   ノイズがあるから音が悪いのではない。ノイズがなくても音が悪かったり、音を悪くしないノイズもあるみたい

   だ。

 

大:ノイズがあるのに音が良い理由はディザ効果か?

 

相:自分の作ったアンプにはスイッチングレギュレータが入っている。レギュレータはかなりノイズを出すのに入れた

   方が音が良いのはなぜだろう?

 

大:先日アムトランスであるメーカのACノイズカットトランスの効果を試聴した。入れた方が音が良くなった。どう

   なのだろうか?

 

草:ある会社の製品を最初は音が良いと思い使ったことがあるが、調べるとものすごいノイズを出していた。スイッ

   チングレギュレータ式でノイズを取り切れないようだった。

 

大:車の中で聴く音がいいが、なぜだろうか?電源がバッテリーだからという意見がある。しかしあんなノイズの多い

   ものがなんでいいのか?

 

相:自分も車の中の音はいいと思う。ノイズがいっぱいあるのに。室内空間として決していいはずはないのに。な

   ぜ良く聞こえるのだろう?

 

コンデンサ

 

大:音質に影響を与えているのは電解コンデンサだが、ESRなどの物理データが良くなったといわれるものを

   聞いてみると、音は決して良くなっていない。どうしてか?

 

相:電解コンデンサンが一番不完全。最近の私のアンプでは大容量ン電解コンデンサを使わないようにしてる。

 

草:電解コンデンサは量産品であり、その量産設備に手を入れて試作品を作ることはできない。メーカに試

   作をお願いしているが聞いてくれない。材料面でも特別なことはしてくれない。そこで自ら、電解コンデンサン

   ではなくフィルムコンデンサで大容量のものを作った。立ち上がりの音に付帯音がつかない高音質のものだ。

 

相:昔からフィルムやオイルでいいものがあった。

 

大:フィルムコンデンサといえども品物によって音質差はすごくある。

 

草:今までの開発でコンデンサの音をよくする方法はある程度分っているが、それを実現するには膨大な材料

   を買う必要がある。電極に音が良い銅箔を使いたいが、そのためには何年分かの銅箔を買わなければなら

   ない。材料メーカは少量では売ってくれない。

 

中:それは経験がある。ソニーでエレクトレットマイクの検討にフィルムが少量だけ必要な時、アメリカのD社に問

   い合わせたところ、「ロール一巻き」なら売ると言われた。

  ところで、コンデンサはフィルムの方がよいのでは。電解コンデンサは化学の世界。どうも時間が掛かる。

 

相:時間軸を考えないときは電解でもいいが、時間軸を考えるとまずい。

 

草:ケミカルが入ると電気のパスがどうなるか推察がつかない。どうもよくわからない。

 

電流

 

大:電流は電線をどうやって流れているのか?皆に聞いているが誰もわからない。

 

相:ケーブルで音が違うことが話題になったころから考えているがよくわからない。

 

   半導体の中は抵抗だらけで、真空中とはとんでもなく違う。

 

相:半導体は電子を流す。

 

大:真空管は電子が飛んでいる。

 

草:半導体内で電子がどうなっているか?電子顕微鏡で見ると電流の流れている姿が見える。電子とホー

   ルとの関係がどうでどう動いているのかが分からない。

 

中:音もそうだ。 粒子が飛んでいくわけではない。電気と同じ。

 

相:導体の周辺物質によって電流の流れる速さが変わる。だから音が変わる。塩ビよりテフロンのほうが良いと

   いう説明がある。真空が理想かも?このたまごスピーカのケーブル被覆は塩ビだが、もっといい材料はある。

 

大:黒い塩ビには炭素がふくまれていて音が良くないといわれる。確認すると確かに良くない。

 

相:炭素で電子が動くのだろうか? 

 

大:銀線の音がある。銀線で作ったものはみんな銀線の音がする。O社のトランスは銀線を使っていて確か

   に銀の音がする。材料の音が出てくる。

 

草:中島さんに教わったことだが、オーディオ機器、スピーカ、マイク、ケーブルなどをハンマーでたたくと、その音

   がみんな出てくる。ある素材で電線をつくったとき、その素材を叩いた音がその電線使ったオーディオシステム

   から聞こえる。

 

大:それはいったいなぜなのか?

 

草:ガラスCDもガラスの音が聞こえる。

 

CDの音 

 

相:最近再びCDやデジタルオーディオの音が悪いと言われはじめ、一部のファンはLPに移っている。なぜかと

   いうとDAをきちっとしないままCDを聞いているので、最終的にちゃんとしたアナログの音を聴けていない。

   AD/DA変換をきちんとやれば今よりもっとアナログの音がちゃんと聞こえるはず。そこをやらないままなの

   でかわいそうと言えばかわいそう。

 

大:デジタルはいじめられているけれど、自分はデジタルの音は決して悪いとは思っていない。

 

相:デジタルだからいい音が聞けないということはない。

 

草:デジタルはまだ発展途中では。

 

相:CDができて30何年経つのに、まだ途中だなんて恥ずかしい話ではないか。

 

草:デジタルとアナログの原理を考えると、デジタルの究極はアナログ。

 

大:CDプレーヤだけを突っついてきたがアンプその他を忘れていた。

 

相:DAだけを良くしてもダメで、そのあとにつなぐパワーアンプもよくする必要がある。

 

大:ここが悪いというとそこばかり見えてしまう。CDプレーヤの再生もちゃんとできていないのに、fsを上げたりいろ

   いろしているが、音のためになるのか?何かがおかしいとなると作っている人たちはそこだけに集中し、そこが良

   くなると全部が良くなったように思ってしまう。人間の習性か。トータル的な判断がなかなかできない。

 

 器の評価

 

相:お客さんに聞かせれば大体間違った判断はしない。

 

大:そこは難しい。10数人のお客さんに聞いてもらっている時、2~3人の声の大きい人の意見にひっぱられ

   てしまう。

 

相:そういう場で評価させるととんでもない方向に行ってしまう。

 

大:ソニーのアンプは録音スタジオで評価してもらっていたが、あんな間違いはぜったいにない。なぜなら、スタジオ

   で作る音は別物だから。昔、新日フィルの演奏を録音しそれを演奏者に聞かせると聞き方が普通のひと

   と違っていた。彼らは自分のミスがはっきり分かる録音を好む。そういう聞き方をするので、一般のオーディオ

   好きの人が聴く音とちょっと違う。

 

草:モニタースピーカの役割はそこにある。だからとんでもない音で聴いている。

 

相:それは音の違いが分かれば良いからで、モニターのオーディオは分かるための道具。

 

大:そういうプロの人たちに商品を聞いてもらい、販売は家庭で聴く一般の人に、というのはちっと問題ではない

   か。

 

終りに

 

中:皆さんの話、半分ぐらいはよく分かった。しかし残り半分はたかが電気回路のこと。何とかなるのでは。