第7回よい音チャット

 

2017年3月29日(水)13:30~16:00、補聴器、ダミーヘッドなどをテーマに中島代表を囲んでオーディオ談議が開催されました。

 

場所 NHラボ本社(中島代表宅)

 

参加者

 稲永潔文氏: ㈱サザン音響代表 

 江端員好: ViXS Systems Japan ㈱ システムアーキテクト

 中島代表:NHラボ㈱

オブザーバ

 風間道子:NHラボ㈱

 

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江端氏の略歴

ソニー株のデジタルオーディオ部からキャリアスタート。

PCM3324、PCM3102 PCM1610 PCM7010などの開発を経て、ビデオ用のハードディスクレコーダ、テレビのブラビアの開発にも携わった。

現在はViXS Systems Japan ㈱で4Kブルーレイディスク再生機で映像にオーディオをインプリメントする仕事(LSIの設計、LSIソフト開発業務など)を行っている。

 

稲永氏の略歴

ソニー技術研究所入社。音響トランスジューサ・システムの研究開発、測定、評価、規格業務など幅広く担当。1995年には、それまでの研究をベースに頭外定位サラウンドヘッドホンを商品化。

ソニー退社後㈱サザン音響を創立。ダミーヘッドを中心とした録音システム、および音響機器測定用HATSシステムの研究・開発・製造・販売を主業務としている。

 

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チャット抜粋

なお、イニシャルはI:稲永氏、E:江端氏、N:中島代表、K:風間 を表します。

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N:今回、題目を決めて何か結論付けようという会ではない。面白い話が出てくればよい、

 

ハイレゾ

I:オーディオは低迷していたが、近年ハイレゾというフレッシュな風が吹いてきてここ1~2年ハイレゾブームなので、弊社もその流れに乗ってハイレゾ対応ヘッドホン/イヤホン測定機器、ハイレゾ対応レコーディング機器などを扱っている。

 

昨年4月に、JEITA RC-8140B追補という20kHz超のヘッドホン/イヤホン測定法規格がリリースされた。これに伴い、今年の10月からオーディオ協会では、その測定法に基づいてヘッドホン/イヤホンがハイレゾに対応しているか否かの判定をすることになっている。

 

球形スピーカをJIS規格に

I.JIS C55322014年に改訂された。

 

N.スピーカのJISで四角のキャビネットを球形にすれば規格も楽になるのでは?

 

I.四角の箱はディフラクション(回折効果)を計算できるし作り易い。直方体キャビネットの角を取ることで回折の影響を低減できる。現在、日本提案のJIS密閉箱 (IEC-1)と、角部が丸められているフランス提案密閉箱(IEC-2)の2種が規定されている。

 

N.やるなら球が良いのでは。

 

I.理想的な形だが、球形は作るのが難しく、様々な大きさや形状のスピーカの搭載が・・・。

 

補聴器、聴覚

 

N.補聴器を使い始めて3年目。ノイズが減り、昔に比べずっと良くなったと思うが限度がある。つけていると自分の声が嫌な声に聞こえる。大きな音が跳ね返ってくる。一人だけでテレビを見ている時などは使った方がよいが、周りの炊事の音などが入ると雑音になり、途端にだめになる。また、体内音、食べ物を嚙む音などが聴こうとする音の邪魔になる。

 難聴になりかけのころ、聞き取れない言葉を聴きなおしているうちはいいが、面倒くさくなって聞き直さなくなると頭がさぼる。意味のわからないことを情報として脳は受けとっているので、返事がいい加減になる。脳への刺激の与え方がおかしくなると認知症になるのではと思い、無理をして補聴器をつけることがある。

 

I.相手の話がよく分からないので、適当にしゃべる(返事する)ということですか?

 

N.何度も聞き返すのがいやでほったらかすと、脳もほったらかす。返答を用意しなくなる。

 

I.外国語で会話している時言葉が良く分からないと、適当な返事をしているうちに会話の中身も薄くなるのと同じ感じですか?

 

N.その通り。そのために、難聴はすすまないが、認知症は進む。いいかげんに聞いていい加減に返事をするようになることが一番怖い。

 

I.頭がさぼり始めると思考が易きに流れるようになり、それが認知症に繋がるのでしょうか?

 

N.補聴器はつけていい時が案外多い。装着感が良いので、ついはめていることを忘れて風呂に入ることもある。20年前に父親に買ったものと比べるとずいぶん良くなった。ステレオだし。大河ドラマでは今まで聞こえなかった音がもっと正確に聞こえる。そのこと自体は非常に良いが、先に述べた多くの問題があり、いいところばかりではない。ただつけないと認知症になる。

 

I.自然な状態に聞こえる補聴器があるとよいのでしょうか?

 

N.体内音や雑音は、補聴器特性で高い音が補正されていて、遠慮なく入ってくる。一人で話している時は、じゃらじゃらした音が聞こえるが、自分が我慢すれば人と話ができる。周りから、特に高い周波数の、雑音が入るとそちらの方に気を取られてしまい、駄目ですね。補聴器は受け身になればある程度補聴器らしく使えるが、自分が補聴器を使ってやろうとすると大間違い、と思う。

 

I.今の補聴器は何点くらいでしょうか?

 

N.聞くものによって違うが、半分は駄目だろう。

もうひとつは販売員に具合の悪いことを伝えると立派なコントローラを動かしながら調整してくれるが、ほんとは自分でそのコントローラを使えば、今よりももっとかなり良い状態にもっていけるのではないか。人を通すと、伝え方、受け取り方、機械とのインターフェースなど、限界がある。どうしても通じない。

 

E.タブレットなどでEQを調整でき、OKなら外すというカスタマイズができるといいいいのだろうか?

 

I.自分で調整させてもらえないものですか?

 

N.絶対ダメ。向こうの商売が上がったりになる。販売店から補聴器の特性を調整するリモコンを借りた。 音楽や会話のイコライジングを調整できる(というが)その特性は言ってくれない。

 

E.ユーザに任せると音量を上げてしまうなどの危険もあるので、あまりやらせるのも問題かなとも思う。すでにこのようなリモコンがありブルーツースを使えるのならいろいろやりようがあると思う。

 

N.補聴器も音源によって違う。じゃらじゃらしたいやらしさを変えるわけにいかない。例えば戦いのドラマでの刀の音など。シーンに応じて調整することは難しい

 出来れば耳が悪くなる前に、何らかのヒアリングエイドをした方がいい

 

I.耳に手をかざしだけで十分理解できることがある。微妙に自分で手のひらの形を調整している。このパッシブな補聴器はすごいと思うが、ダンボの耳はかっこが悪い。でも必要な時だけ簡単に使用でき効果のある手の補聴器は最高だと思う。

 

耳への手かざし実験

 

I.ヘッドホン/イヤホンでダミーヘッドマイクの音を聞きながら、ダミーヘッドの耳に手をかざすとどのような音になるか体験してみましょう。

**皆で試聴**

I.手をかざすと1~10kHzの帯域で手の形、かざし方、で特性が変化する。耳たぶの効果は絶大。

そして、これ(耳たぶ)を取ってみる。

**皆で視聴** 

E.うしろの音が聞こえるようになる。

 

I.耳たぶがないと、普通のステレオの状態に近い音がする。普通のマイクを2本、球体の側面に置いた時と、耳がないダミーヘッドマイクの特性とほとんど同じ。耳たぶは定位情報などを付け加えている。耳をつけると周波数特性の3kHzあたりにピークができる。マイクの取り付け(耳道入り口から鼓膜)位置により、ピーク周波数が著しく変わる。これは、鼓膜(マイク)までの耳道とコンチャとで共振をしているから。マイクの位置を耳道の入口近くに移動させると、ピークは5kHzくらいに移動する。イヤホン受聴はこの状態。イヤホン受聴とヘッドホン受聴とでは全然違った共振特性になる。

**皆で試聴**

 

E.ヘッドホンはクリアに聞こえる。

 

K.イヤホンは音像が近くに聞こえ、遠くの音がよく聞こえる。ヘッドホンとイヤホンで耳の共振の位置が違うので聞こえが異なる事がわかる。

 

 I.補聴器は耳に突っ込む方式が多く耳道入口が密閉される。そのため、違和感があり、3KHzのピークがなくなるため不自然になる。実際の補聴器では3KHzあたりの特性を持ち上げている。

 

前方定位

 

E.バイノーラル録音をヘッドホンで聞くと、左右後方は定位が良いが、正面前方で音が上昇する。解決策はあるのか?

 

I 頭を動かしたときに音源から両耳までの頭部伝達関数を変化させるようなヘッドホンシステムで、聞こえ方を頭の回転に応じてシームレスに変化させれば、音は完全に前に出る。さらに、映像の情報が加われば苦も無く音は前に出る。

  これを解決した「バーチャルホン:VIP-1000」を20年前に商品化した。

 

K.ダミーヘッド収音をヘッドホンで聞くと二重に耳たぶの影響が入る。イヤホンではそれがない。耳の形が付いたマイクをつかうのはどうか?方向定位の改善やノイズの低減ができるのでは。

 

E.イヤホンは耳(鼓膜)がダイレクトにドライブされる。BOSE社は耳の特性をシミュレーションしDSPで実現できるそうだが、回路が大きくなり補聴器向けに小さくできない。 

 ヘッドホンはたくさん持っている。 録音時は密閉型。試聴にはスタックスと使い分けている。スタックスのヘッドホンは自然な感じがする。録音したものを人に聴かせるとき録音用ヘッドホンではだめ。スタックスは感心される。

 

K.スタックスのヘッドホンは室内音響で出す音を目標にしている。(良好な室内音響特性、という意味か?) 耳から離れていて、ほかのヘッドホンイヤホンと違う。

 

E.そのため、スタックスではヘッドホンと言わずイヤスピーカと言っている。

 

 N.耳たぶ、ダミーヘッドの材料は?

 

 I.耳たぶはIEC規格で規定され、形はもとより硬さ(ショア硬度)、材料はエラストマーと決まっていて、人の耳たぶの柔らかさに近い。材料の損失は規定されていない。実際はシリコンゴムで作る。 耳を作るのはとても大変で、一般的な金型ではアンダーカットのため作成にとても苦労した。録音用ではアンダーカットのないエルゴノミクス形状のタイプを作成したが、特性はマクロに見ると実耳とそん色のない耳が出来た。

 オリンピックを迎えるにあたりバイノーラル録音を盛り上げる動きがある。市民権を得られると良いと思っている。

 

E.YOUTUBEに多くの映像がアップされており、それらを録画するアクションカメラがたくさん売られているが、ステレオ録音できるのはほとんどない。映像主体で、音のことをあまり考えていないと思う。改善してほしい。

  仕事で3次元音響再生にも関係しているが、マルチチャンネルに対応するために家庭でスピーカを沢山につけるのは大変。代表宅のように天井から吊るす方法はマルチチャンネル再生に向いていると思う。

  最近のビデオ機器も音で勝負しようという考えが見受けられる。テレビなどのスピーカが小さくて低音が出ない。補聴器を使っているお年寄り、大きな音で困らせるのはまずい、などの問題に対しては、DSPを使って工夫できる。 DSPをレコーダやテレビに入れていくのが今後の自分の仕事です。

  補聴器はリアルタイムモノの最たるもの。遅延の少ないDSPを使い、タブレット、ブルーツース、GPSなどの技術と組わせてイコライジングを行える。

  人間は自分の生活環境でその時々に聞く音を選んでいるが、現状の補聴器はそれが選べない。IT技術でシームレスに音を変えられると面白いと思う。

 

以上