第2回よい音チャット

写真左

中島代表、小高氏、宮下氏、高松氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真下

風間氏、茶谷氏

日時:平成28810日 13301600

場所:中島代表自宅

参加者:中島平太郎代表、高松重治氏、宮下清孝氏、小高健太郎氏、茶谷郁夫氏、風間道子氏

記録:高田寛太郎

 

自己紹介

 

高松重治氏(日本オーディオ協会諮問委員)

19443月生まれ

アキュフェーズを去年退社、オーディオ一筋50年、アキュフェーズ入社後10年くらいから商品企画担当。同社のほとんどの商品を担当。

 

宮下清孝氏(㈱JION

1948年生まれ。

何かを作るのが好き。小三から秋葉原に通っていた。

なんでも中を確認する癖がある。真空管、マイクロホンも分解した。

アマチュア無線のノイズの世界より、オーディオで良い音を求める方が好みに合っていて、特にスピーカに一番関心があった。最初はSTAXでコンデンサースピーカとヘッドホン開発を行ったが、フォスター電機に移り、ダイナミックスピーカの開発設計に携わった。OEMビジネスがメインだったので海外赴任が多かった

その後、NHK標準モニターの大型スピーカを開発。アキュフェーズのアンプとセット販売。全国のスタジオに納入した。

 

小高健太郎氏

1951年生まれ

大学で超音波の研究。ソニー入社後中島代表とPCMの開発に携わる。CDの信号処理、DAT開発など。

80年代後半はDATDDSに展開。

90年代はデジタル携帯電話開発とビジネスをヨーロッパ中心に展開。

2003年ソニー㈱に戻り、クオリア事業副事業部長。高精細フォトビュアーの開発を行う。

その後、トランスファージェットのビジネス推進。

ソニー退社後、バッファロー㈱でオーディオNASDELA”の開発推進。2年前に退き現在はフリー。

アナログとデジタルの音の差に興味があり、理論と実際の両面から考察をしている。

 

茶谷郁夫氏(NHラボ㈱)

1947年生まれ。

1972年早稲田大学理工学部卒業。同年SONY入社。

2006年ビフレステック㈱入社。

2015NHラボ㈱入社。取締役。現在に至る。

スピーカひとすじ44年。趣味は園芸、木工、読書、スピーカ創り。

 

風間道子氏(NHラボ㈱)

(株)永田穂音響設計事務所、(財)NHKエンジニアリングサービスにて建築音響設計業務に従事。

 その後早稲田大学客員研究員として音声信号処理の研究。

 現在、NHラボ㈱取締役、千葉工業大学非常勤講師。

 一級建築士、工学博士。趣味は園芸、彫金、読書。

  

以下敬称略。

なお、チャット参加者のお話を100%そのままではなく、編集して記載しました。(文責、高田)

 

ハイエンドとは

 

中島

今回のテーマとして「ハイエンド」を取り上げたがどう考えるか?

 

小高

こだわったオーディオのことをいつからかハイエンドと呼ぶようになった。

高級品というべきか、高額品というべきか議論が分かれるのかもしれないが。 

ソニーが出したクオリアは高額品というコンセプトだった。見かけは確かにハイエンドと言えた。

 

高松

アキュフェーズでは、一人が商品の方向を固めている。みんなの意見を聞くと良いものができにくい。

もちろんハイエンドをやっているという会社であるという意識を持っている。

例えばFMチュナーで定価20万円のものを作る場合の材料費は結構厳しい。いろいろコストダウンすると商品価値が出ない。また、海外で高品質ものを作ることが難しいという経験もしたのでメイドインジャパンにこだわっている。高いなりのことをやればよいと考えた。

創業後10年くらいで、もう一ランク高いもの、別格のものを作ろうと決めた。

さらに20年くらい経たとき(今から10数年前)、さらに高いもの、プリアンプで130万円ものを170万円にアップしたものを清水の舞台から飛び降りる気持ちで作った。

価格決めについて外部の人は気軽に「いくらで売れそうだ」と無責任なことを言う。アキュフェーズはそれには耳を傾けず、部品価格から算出される値段から値付けターゲットを決めた。

定価170万円の場合、どこにお金をかけようかと考える。アキュフェーズでは性能にお金をかける。(アンプのノイズなどの)性能を1db2db改善することはとても大変なことであり、その実現には回路をパラ接続あるいは4パラ接続などにしないとできない。コストアップにはなるが、基本に忠実にやろう、眉唾なことはやるまい、と決めている。

 

小高

素晴らしいことだと思う。アキュフェーズのカタログからも設計思想が感じられる。理屈を考えて設計している。こうあるべきだからこう設計する、ということが伝わってくる。それが続いているのがすごい。

 

良い音とハイエンドの関係は?

 

小高

デジタル時代になって、音や性能はADDAでほとんど決まる。

アナログ時代には製品により性能に大きな差があったが、デジタル時代になると差が小さくなり、アナログ機器のようにすごくこだわらなくても、ある程度満足できる性能が得られる。逆に真面目にこれ以上やっても大きな差はわからない。ユーザがこの差が大きいんだよと感じるか(感じてくれるか)どうかが大切。

デジタル時代では、ハイエンドに対する思い入れの部分に、しっかりした理論付け、アナログとの比較、デジタルの良し悪しの把握、自分たちの信念やフィロソフィーなどがないと、本当のハイエンドとかデジタルの凄みを出せる商品はたぶん出てこない。「ハイエンドっぽい」というのはそこそこいくらでも出てくるだろうが。高松さんのようにアナログを極めた人がしっかり考えていかないと出てこない。

 

中島

デジタル、アナログの違いは、数え方が違うだけではないか?2進法でやるか、10進法でやるかという。同じ波形をどう刻むかということで、片方はパルスで数え、片方は正弦波で数えるだけ。何も変わったことはないのではないかと思うけれど。違うのだろうか?

 

小高

技術が熟してくるとアナログもデジタルも本質は同じだということが分かってくるが、最初はアナログ、デジタルは別物とみなされていた。自分が開発を始めたときはそのように考えていた。振り返ってみると、デジタルは性悪なものとも思った。当時AD変換器の性能が悪く、PCM-1では12ビット3折れ線のADC開発をおこなった。ADC(アナログデジタルコンバータ)入力に正弦波を入れ、そのレベルを絞ってゆくと出力音はブリブリバリバリと聞くに堪えないノイズになった。デジタルは入力が小さくなると、16ビットといってもフルビットを使っているのではなく、下のLSBしか振れていない(使わない)。デジタル変換した波形など見られたものではない。当時こういう問題はクローズアップされず、「16ビットでやれば90dBのダイナミックレンジがあるんだよ」という話が多かったが、レベルを下げていくとひどい音だった。アナログのカセットではホワイトノイズの中で信号レベルが下がっていくが、デジタルではノイズは無いが、いきなり汚い音になってゆく。それを防ぐためにディザを入れると魔法のように見事に元の正弦波に戻る。ディザなどを含め前提的な処理をすれば、デジタルはここが良くてここが悪いという勘所を抑えられ、究極的にアナログと近くなってくる。アナログでは出来なかったことがデジタルでは出来るということが沢山あるが、デジタルの悪さも多くあった。その後10年、20年たってデジタル技術がこなれてきたと感じている。

 

宮下

現在は音源としてはデジタルを使わざるを得ない。CDや配信は再現性が良い。アナログ音源にこだわると仕事はしにくくなる。CDが出たころは音が未完成だったので、デジタルは良くないのではないかという印象を持った。今になってみると、そのようなことは全くなく、デジタルでもきちん使えば十分良い音がする。逆にアナログでも間違えればちっともよくない音がする例はたくさんある。技術が進歩すれば、アナログデジタルを区別することはあまり意味のないことかと思う。しかし、アナログレコードをかけることはハイエンドオーディオの楽しみの一つであることは理解できる。

いきなり無音からスタートするのではなく、針の音から始まる、という独特の楽しみがある。

 

高松

アキュフェーズでは有名なアーメリングのCD(1982年ころの録音)を今だに使っている。

このCDを再生すると、その音は当時のCDPと今のCDPでは大違いである。ローパスフィルタも昔と今ではかなり違うが、音決め用のディスクとして古いCDがいまだに使える。ADが良かったのかDAが悪かったのかわからないが、昔の(CDを作った)人たちは偉かったなと思う。どのように低いレベルを処理したのかと思う。今でも普通に聞こえる。

 

デジタルへの対応

 

茶谷

 アナログを大切にしていた人が突然現れた「かた~い音のデジタル」を、どう評価してどう乗り越えてきたのかというところにすごく興味がある。

 

高松

 おなじCDシステムを作るのに他社と同じことをやっては弱小メーカが勝てるわけがないと考えた。当時日立にプレーヤとDACを分離した商品があり、機器間は16ビット伝送路で接続していた。そこで、アキュフェーズは光リンクを考えた。また最高性能のDACを作ろうとICテスターの4ビットのインターシルの4ビット電流源DAC4つ重ねて16ビットを使った。ところが4つのチップの温度特性が異なり、4ビットごとのデータが揃わない。チップの上に放熱器をおいて温度を同一にしてみたが全くだめだった。そこでICVBEを調べ、その値をそろえたところ温特が一定の傾きとなり解決した。そういう選別を初期には行っていた。抵抗も、微調のため10回転のトリマや、ハンダする距離まで限定される抵抗を用いたりして16ビットDACを開発した。担当者としてはとてもおもしろかったが、当時の経営者は(コストを考え)ハラハラしていたと思う。他社と違うことをやって性能を上げようとした。

 

小高 

振り返ると、CMOS技術とΔΣ理論がうまくマッチした。

今のほとんどのAD/DADSDの源流のようなΔΣを基本に、それをPCMにしたりDSDにしたりしている。

 オリジナルのDSDが本当に良いのか、ハイレゾのPCMは何ビットが本当に良いのか、という議論はある。ネイティブと詠っている製品については、フォーマットに関してはネイティブだと思うが、中での処理はPCMDSDがごちゃごちゃになっているように見受けられる。

 SONYの最初のCDプレーヤCDP101ADDAの設計で、自分は信号処理を担当した。DACは当時としては斬新的な電流積分のアイディアでやっていたが、フィリップスは4倍オーバサンプリング方式で、14ビットDACと組み合わせ、16ビットの精度をうたった最初のCDPを出してきた。自分はエラー訂正などがメインの仕事だったため、フィリップスの論文を読むまでオーバサンプリングやノイズシェーピングの知識はなく、その時新しい技術を初めて知った。フィリップス方式のトレンドは現在に続いている。今ではオーバサンプリングすればアナログフィルタで急峻にハイカットする必要がなく、DACADCは基準のサンプリング周波数で16ビットや24ビットの精度がなくても、オーバサンプリングしてそのあと精度を出してゆけばよい。この考え方はCDが出来てから10年後くらいからすごく進歩した。それは、世界中のメーカや技術者が「CDやデジタルをやらなければいけない!」と考えたからだと思う。その中で賢い方法の開発を皆が競い合い、技術が向上した。

 

ハイエンドとプロ用の違い

 

宮下

プロの世界の人とハイエンドの世界の人たちは全く別の世界で生きている感じがする。

プロの判断基準は、その機材を使ってペイするかどうか。良い機械を使いたいけれど、それを使うと赤字になる場合があるので使えないことがある。

ハイエンド(趣味)の世界は、自分がほしいか、買えるかで判断する。利益が出る出ないは考えていない。予算のある限り、借金してでも、ハイエンド製品を買う場合がある。ハイエンド的なアプローチとは、ソースを少しでもよい音で聴くために、ばく大なお金を掛けることとも言える。

 プロの録音制作現場は機材を数多く使うので、高価格、高品質という点だけにこだわれない。

 

フォスターではプロ用とコンシューマ用の両分野でスピーカの音作りをしたが。両者のアプローチには違いがあるが、最終的には同じものになる。音にキャラクターをつけるかつけないかを意識してやる場合と、意識しないが結果的につく場合とがある。設計者の個性もそれぞれ違うので、当然それがキャラクターとしてつく。それが好きか嫌いかの問題。アキュフェーズが好きな人は大好きだが、嫌いな人は嫌い、とはっきり分かれる。ハイエンドの世界はある意味はっきりする。

ハイエンドはブランドイメージもあるが、そのメーカの長い間の技術や経験の蓄積によって出てきたものがある。ただしコスト無限大になる。(爆笑) 量産では使えるコストに限りがある。実際は2億円かかるものも、200万円で作らないといけない場合がある。その時にはやりたいことをいくつか取り除く必要がある。プロ用は予算枠内で、基本的性能、安定性のよさ、壊れにくさなどを重視した設計を行う。故障した時すぐに直せることも重要。

 

メーカによってスピーカの音は違う。一般論だが、あまり個性的だとモニターには使いにくい。スピーカのキャラクターが制作の結果(ミキシング、マスタリングなど)に反映され、最終的な音に逆の影響が出る。(低音が出るモニターを使うと仕上がりは低音不足に感じる。)これを意識して仕事(サバ読み、癖を読みながらの仕事)すると疲れるので、やはりあまり癖がないスピーカが好まれる。

 

茶谷

プロはおおもとの音源を持っているのが強い。

高級な音はお金がかかるので聞かないことにしている。自分はお金を掛けないで良い音を作りたい。

しかしショーでは高級な音を聞いて定点観測している。

また、過去に評論家やオーディオ販売店のオーディオ装置で「良い音」を聞いたことがある。

音楽ソースとは全然別な音であってもハイエンドオーディオの世界というものを作れるのだろうと思う。

 

宮下

録音現場では必ずしも良い音とは限らない。そこで制作された音を使って再生しているユーザが、それよりもっといい音で聞いていることがある。そこが面白いところで、それがハイエンドオーディオなのかなと思う。音源を作っている人たちが分からない音が、再生すると聞こえることがある。録音した人にきちんとしたシステム(ハイエンド)で聞かせると「こんな音が入っていたのかと」びっくりする。マイクロホンはちゃんと拾っていて、録音現場のモニタースピーカでは再生していないけれど、音源のデータの中には信号がちゃんと入っている。

 30年前のCDでも実はきちんとした音が入っていたと思う。それを再生する装置によって聞こえる音が変わってくる。どこまで穿り出すかがハイエンドオーディオの楽しみだと思う。誰も聞いたことがない音を出したい、とう趣味の世界であるが、お金がかかる場合が多い。高級オーディオ=高額オーディオとなりがちだが、決して金額だけでは言えないところがある。音場感だけで言えば、このたまごスピーカはほかのスピーカにはない良さがあるという意味で、このスピーカはハイエンドオーディオだといえる。

一方、自分が買えないも製品は、ハイエンドでもなんでもない。現在欲しいと思うDACがあるが1250万円もする。宝くじに当たらなければ買いえない。このDACは自分にとってハイエンドではない。

 

小高

最近の製品は高すぎる。以前は何十万円ぐらいがハイエンドで、お金をためれば買えるかなと思えたが、今どきは何百万円、あるいは1000万円をこえるようなとんでもないものもある。

 

収音とサンプリング周波数・ビット数

 

高松

最近はマイクも周波数チャンネルごとに分けて録音する。

チャンネル数が多くなるので大変だが、音の濁りがなくなる録音が出来つつある。再生時のスピーカーマルチチャンネルのマイク版といえる。

 

小高

マイクでもデジタルマイクが増えてきている。

96kHzFS/ 24ビットでは足りなく、384kHzFS/32ビットくらいないとダメでは?

ノイズフローは-120130dBぐらいと思う。

初期のDA変換器では、48ビットしか振れていないときの音は本当に悲惨で、ノイズの中にうずもれていた。アナログではゼロクロスのスイッチングひずみを問題にしてもの作りしているのに比べあまりにもあらっぽい話だった。

全く誤差のない24ビットで正しく、ディザやノイズシェーピングしたものはオーディオ信号のクオリティは必要十分であるが、本当に24ビットの階段で、誤差ゼロ、あとはランダムな熱雑音だけ、という形で表現できるのか?おそらく24ビット精度と言っているものも、結局は24ビット相当程度の階段があるだけで、32ビットといっている今どきのDAは本当の性能は120dBくらいしか出ていない。が、32ビットの階段のほうが24ビットより微小レベルのリニアリティはよいのではないか。そういう意味で、微小信号をなくさない意味で、プロのマスターでは32ビットでとるべきではないかと思う。

 

 高松

 しかし、伝送路まで考えると無駄ではないか。ノイズをアーカイブしてどうするの?と考える。

 

小高

今どんどんサンプリング周波数を上げて行っている。DSDもサンプリング周波数を上げて行っている。

今のネットワークでは簡単に伝送容量を23倍にすることができる。

昔のパッケージメディアでは容量を増やすのが大変。その中にいかにいれるかで四苦八苦していたが、今ではいとも簡単にできてしまう。すごく幸せな時代といえるが、何か安易でないのか?

同じ2倍にするのに、量子化ビット数、サンプリング周波数で2倍とか、ビット数を16ビットから32ビットにするととんでもなくダイナミックレンジが広がる。それに比較するとDSDで周波数を2倍にして総合量を2倍にしても、本当の可聴帯域内の帯域内のダイナミックレンジはどのくらい増えるのだろうか?どれが正しい帯域の使い方なのだろうか?というところが非常に疑問に感じていることも多い。あと、実際にそのようなファイルはできるがそれを再生している機器の実際の、ネイティブな、例えばDSDストリームの原理原則に基づいてDA変換しているのはほとんどなくて、実際はそういうフォーマットをPCM信号と解釈してオーバサンプリングフィルタして、マルチビットのDAでなくデルタシグマという、ある意味フィードバックがかかっている系の中で再生していて、結局何をやってるのかと思う。なにか安易で、違うのでは?という感じがする。

 

高松

アキュフェーズのSACDはそのままDSDを出している。

ハイビットハイサンプルについては、一般的にはユーザは欲が深くて数値が良ければいいに違いないと考える。固定されているCDSACDプレーヤと違ってソフトでいかようにもできてしまう。ユーザはどれがいいのか迷い、欲深いほうに行ってしまう。すると送る方はとても大変になる。

どのくらいの伝送路がベストなのか??

 

よい音

 

オーディオ協会で「良い音委員会」をやっているが、良い音を定義するのに、ビットやサンプリング周波数で議論してもうまくいかず、結局昔のOLSONの考えを現代風にアレンジし、みんなに理解してもらえるような軸にした。協会のホームページで公開される予定。良い音の定義は大変難しい。

 

茶谷

スピーカの音聞きを何十年も経験してきた。音の良しあしは大体音が出た瞬間にわかる。

アナログ時代のマニアは針を置いた瞬間に音が分かるとよく言っていた。

以前中島代表にSACDを音源にして、スーパツイータの有り無しでの音の差を聞いてもらったことがあるが、有ると「ウーファの音が変わる」と評価された。中島代表のお年が70歳代くらいの時のことで、フレッチャーマンソンカーブをはじめとする音響理論では説明できない。自分の仮説として、高次倍音の変化がウーファの音色に表れている。フェレッチャンーマンソンのカーブと音の聞こえとは関係ない。20kHz以上の変化でも、意味のある変化は人間は変化として感じていると思う。

 

小高

デジタル信号処理を正弦波で調べるとエラー訂正の効果ははっきり分かるが、音楽波を使うとわかりにくい。音楽波での評価は難しい。

さらに、どれが良い音かについては、個人的な感覚に寄るところが大きい。

ハイレゾもマスタリング変化し、しかもユーザがどういう装置で聞いているか、聞いている部屋の音響はどうかなどに大きく依存する。

マスタリングした音とユーザの再生音は異なるといえる。また、ある程度のダイナミックレンジに抑え込んだ方が人にとって良く聞こえることもある。

そう考えると、デジタルでやたらに忠実度を追及しても、それでなんだ、ということになりかねない。

 

収音時の問題

 

宮下

最近、ハイビットレコーディングに関係することが多いが、録音する人たちは、ハイサンプリングのほうが音が良い、という結論になっている人は少ない。96kHz48 kHzの音の方が好きだという人が多い。技術でなく耳で判断している。ハイレゾはどこかにまだ何か問題があるのでは、ちゃんとこなせてないのではないか、と思う。

最近気が付いたが、マイクロホンはいろいろなノイズを拾っている。スペアナで見ると100kHzの下のところにかなりのノイズがある。48kHzで録ると高域をLPFでカットしているのでその帯域のノイズに気付かない。信号自体も拾っていない。しかし192kHzで録るともろに50kHz80kHzのノイズが出てくる。具合悪いのは20kHz以下にもその影響が出てくる。ノイズ源としては、機器のスイッチング電源、インバータなどいろいろなものから入り込んでいると思う。マイクケーブルをシールドしてもなかなかとり切れない。マイク自体もシールドしなければいけない。そうすると音が入らない(笑)。こういうことが解決できていない状態で、ハイビットがいいとか何とか言うのはまだ100年早いのでは。元をもう少し正していかないと結論はつけられないと思う。ひずみがなく、ノイズを拾わない状態にしておいて評価しないと、本当はどうかなのかは分からない。マイクがノイズを拾い、機器内部でもいろいろなことが起こっているためか、ハイサンプリングにするとむしろ音が良くないとか、音がやせてしまう、などの評価も耳にするが、これはがたぶんノイズの影響で中低域がやせてくるという傾向によるのでは。ふくよかな感じがハイビットにすると音が細目になってしまう。このノイズは耳に聞こえないので、ハムなどとは違い直接耳で分かるわけではないが、データ上は広帯域の音が出ることになっているが、実際聞いている音は細身の音になる。スーパツイータをつけると低音が良く鳴るようになるという茶谷さんの話しと逆の現象で、高域にノイズが入っていると低域がやせてくる傾向がある。このあたりがこなされていない段階で、やたらとハイサンプリングはやらない方が良いのではと考え、自分としてはそのノイズを減らすところを一生懸命やっているが、それもなかなか難しい。

 

小高

 ハイレゾ時代になった時に、マイクロホンの振動板はどのくらいの微小振幅までリニアに音を拾えているのか?単にノイズに埋もれるだけなのか?スピーカやマイクロホンはどこまで動くのか?

アンプのSN比は100dB程度であるが、そのアンプでドライブした時、実際のスピーカの振る舞いはどうなのか? アンプもどのように動作しているのか?それに対して振動板がどんな動き方をしているのか?抵抗領域があってそれ以上はほとんど振れないのか?

 

中島

一番の問題はマイクだろう。

開発経験を振り返ると、空気の負荷が振動板と同じ程度という点からいうとリボンが良かった。コンデンサマイクは薄流体層の厚みをどのくらいにすれば抵抗つくか?その抵抗も、電気抵抗ではなしに音響的な流体抵抗でなければいけない。電気抵抗はダメでは、という気がする。なぜかというと、世の中の照明のノイズが影響しているとか、大電流によるノイズが影響しているとか言われ、また、低音は聞こえないからどうでもいいということからおろそかになっていることが多いのではないか?マイクは音も拾うが、ほかのものも拾っている。これを改めないと良いソフトはなかなかできにくいのではないだろうか。

正弦波で解析・分析すると問題が出てくるのは低域だが、本当に(音楽波の場合)低域かどうかはわからない。低域ではないのかもという気もする。

むかし熊本の放送局に入った時に、リボンマイクの箱に取っ手がついていなかった、理由を聞くと取っ手をもって箱を振り回すとリボン振動板がなくなってしまう(壊れてしまいから)と言われた。局の中では、マイクを運ぶためには必ず両手で持つケースで、という不文律があった。こういうことからリボンマイクは扱いにくくて、どうしょうもないと考えた。リボンマイクの振動板の重さは空気の負荷質量とんとんであるが、ひょっとするとコンデンサマイクのほうが良いのではないかと思い、コンデンサマイクを開発した。しかし、サイン波分析した低域特性については、コンデンサマイクにも問題があると今でも思っている。

いずれにしても、マイクはいろいろなものを拾いすぎている。

 

試聴する部屋

 

中島

昔指揮者のローデンシュトックに録音した音をミキシングルームでどのように聞いているのかという話を聞いたことがある。彼曰く、「本当の音はホールなどのきちんとしたところで聞く。それを録音したいわゆる缶詰の音を聞くときには、部屋の影響を考えながら、スピーかから出てくる音と、壁からの最初の反射音ので作られる先行音だけを聞いている」

 

宮下

それは慣れればできる。自分も直接音だけを聞き反射音は聞かないようにしている。

反射音には時間にずれがある。壁の反射音は嫌な音がするので、それを聞かないようにして評価しないと仕事にならない。

しかし、これは疲れる作業なので、自分はまずチューニングしたヘッドホンで音を確認する。その方が部屋の影響を受けない。どこで聞いても同じ音なので仕事がやりやすい。ただしそれがいい音かどうかは別の話だし、ヘッドホンが確かなものでないと、その癖を聞くことにもなる。

最近、NHKでも使っているが市販されている拡散体を使った部屋で音を聞くと割と疲れない。

 

小高

自分の自宅で似たようなものを手作りしたが、その効果にびっくりした。

 

風間

拡散体を市販しているメーカさんの展示室を訪ねたことがある。すぐれた音響特性を得るために担当者はものすごく苦労している。視聴空間と同じサイズの空間が天井裏にもある。壁の厚みもすごい。その中で担当者はスピーカの位置をミリ単位で調整していた。聞いた音は素晴らしかった。

  

宮下

2週間前に、沢口さんとそこで録音した。弦楽四重奏プラスワンで。ピアソラ生誕95周年記念。

自分としては、拡散処理を天井や壁だけでなく床にもやってほしいと思った。

 

風間

それはないと思う。なぜなら、人がいるところには床は必ずある。床もない無響室はとても怖い。人は現実の生活では、床の反射音を必ず聞いている。

 

小高

 NHラボセミナーに参加して最初に合点したことに、スピーカが直接放射するエネルギーと部屋の中でどのくらい反射して戻ってきているのかという話があった。

ヘッドホンで聞くのと部屋でスピーカ聞くのはまったくの別物では。

ひずみで考えると CDやアンプは100dBくらいのリニアリティを持つが、スピーカはパーセントオーダのひずみがある。さらにスピーカから出た音が部屋の中では複雑な形で伝搬されている。壁から戻ってくるエネルギーもすべてスピーカのひずみと考えると、アンプ系のひずみと何桁も違うオーダで発生している。スピーカから出た音をどうやってうまく処理するのか。

部屋の影響を受けないヘッドホンと、それを大きく受けるスピーカとは別だなとつくづく思う。

 

残響音と響き

 

中島

部屋といえば、自分も設計に携わった経験のある、大きい部屋、例えば東京文化会館などは設計や調整がすごく大変である。

しかに、この居間(代表自宅)くらいのサイズの部屋に限定すると、音がダブってくることがない。そこで、こういう部屋を想定して、まずどういうことをやれば響きや音像を扱えるかを考えている。ハイレゾとは言わないがハイレベルの音を作れるのでは。

ところが、やってみるとなかなか難しい。スピーカより、部屋の影響が大きい。どういう切り口でやったらよいかまだよく分からないが、このくらいの部屋なら1次反射音までは直接音を増強しているものとみなし、20msecくらいで時間軸を分けて考えている。

 

小高

 ホールでは残響音を感じるが、小さな部屋では残響ではなくて、直接音にダブる形で、いろいろな位相で変な信号がかなりのレベルで入ってくる。そのひずみレベルはとんでもないものになるのでは?

 

中島

それを響きという。

 

小高

自宅では8畳間で視聴している。そこは直方体形状で、前後左右に定在波が出やすい。最初はスピーカのセッティングをいろいろ調整したが、いまいちどうもスカッとした音がしなかった。ところが先ほどの拡散体を見よう見まねで作って、部屋の数か所に置いてみると効果があり、音が良くなった。

その理由は拡散体によるマルチエコーで残響が増えたせいではと思う。中高域に関しては、壁の反射による虚像が定位をボケさせていたのが、拡散体により虚像がぼけ、メインの像がフォーカスされてくる。そのため定位が良くなったように感じるのでは、と思っている。

これは、瓢箪から駒。目から鱗だった。

反射自体は悪さしないし、吸音しすぎたデッドな部屋より、そこそこ反射した方が音は楽しく聞こえる。聞こえ方に変な悪さが出ないようにするには、スピーカから出た音が本来反射する面は、拡散体などで乱反射させると非常に効果があるということを実感した。

 

宮下

もともとの平らな壁は悪さしている。それに何かやれば良くなる。

石井伸一郎さんの音響調整法は低域に効果があるので、あとは拡散体を併用すれば理想的か。ハイエンドオーディオは石井式+拡散体ということになるか。その簡易型は茶谷氏の拡散吸音体とも言える。

スピーカ以外に部屋の音をよくするには、ちょっとお金がかかる。工事を伴う。やりすぎるとスピーカの何倍もお金がかかる。(爆笑)

 

高松

いろいろな部屋があるが、まず生活環境が大切と考えている。それを無視してカーテンや反射物などをいろいろ置いて処理するのは大反対。アキュフェーズ社の試聴室では、ごく当たり前の壁紙を貼ってあるだけ。ただし外から音が入らないように、砂入りのブロックを全面に配置させている。一度部屋の形をいびつにすることも試したが、気持ち悪い音なので、元の直方体に戻した。直方体だと「なき竜」が出るが、そこにはヤマハの調音パネルなど置いて対応する。

低域では定在波の節ができて、場所によって音が変化するが、それを理解したうえで何十年も同じ部屋を使っている。部屋の音響についてはあまり細かいことは言わないが、再生レベルはきちんと決めてあり、毎回試聴前に確認してから聴く。視聴場所も、何十年間にわたり同じ場所で聴く。聴く時間も午前中の9時~12時の間と決めている。昼過ぎ、特に食事のあとは音が分かりにくい。また、夜残業して聞くと、翌朝は全然違う評価になるので、残業での試聴はだめである。

 ホールについては暗騒音を気にする。大ホールや木製のホールなどで暗騒音が違う。

 ホールによっては演奏音が急に止まって残響が小さくなる時に音程が下がるホールがある。疑問に思う。

 

風間

ほとんどホールがそういう現象が起こる。そうでないのは一つくらいしかない。

音程の変化は聞かない(気にしない)ようにしないといけないのでは。

 

高松

しかし、演奏中にもその現象が起こっているわけで、そのホールは音が良くない、ということになるのでは。

 

小高

その原因はホールの残響特性の周波数特性で決まるのか?

 

風間

残響時間は周波数ごとに60dB落ちるのに何秒かかるかしか見ていない。落ち方(減衰の仕方、形状)には着目されていない。ここにそのホールの音響特性の癖が現れる。

 

宮下

そこはウイグナー分布などの解析をもとに、本来コントロールして設計すべきではないのか?

 

高松

楽友協会ホールはいいと思う。音程の変化はほとんど感じられない。

  

宮下

たまたま良かったのではないだろうか。設計図にも書いていないと思う。

 

高松

最新の機材で作っているはずなのに、そういうことが起こるのだろうか?

 

風間

そこに着目していないためだろう。ホール設計には、残響時間のほかに重要なパラメータが沢山ある。例えば、ノイズを抑えること、消防法をクリアすること、予算を満たすこと、など。

 

中島

話は変わるが、一番単純なアンプは、自分の好き勝手にできることにはならないのか?

 スピーだと、たとえばこのたまごスピーカで十分満足できると思うけれども、叩いてみると何か妙な音がする、それを多少違った音にした方がいいかなと思うと、例えば木で作ることも考えられる。ほかにもいろいろ調整の変数があると思う。これに対してアンプの場合にはバリアブルが割合少なくて済むのでは?特にスピーカは3次元であることと、電気抵抗の影響が厄介だと思う。

しかし、部屋はスピーカよりもっと扱いにくいのではないか?扱いにくいためにやっていないのではないか?

 

スピーカの課題

 

中島

ボイスコイルの電気抵抗が問題になるのならば、冷蔵庫をキャビネットにしたらどうか?(ボイスコイルを冷やしてみてはどうか)

 

宮下

以前、超電導スピーカを聞いて、感度の高さにびっくりした。

 

小高

スピーカの定電流駆動の効果は?

 

中島

アイワで経験がある。周波数特性的には良いが時間遅れがでる。特にバスレスのカットオフあたりの音が問題だった。

 

聞こえない帯域の音

 

小高

ハイレゾのソースでアニメ「アキラ」ハイパーハイレゾでは超高音としてアマゾン川流域の環境音を入れているがその効果はどうなのだろう?スーパツイータにハイレゾの超高音を入れると壊れるという話もある。

今まで高域が必要という点が前面に出ていたが、最近は自然音を加える必要性が言われている。

この考えは、一部当たって入れるところがあると思う。なぜなら、いい音=きれいな音と考えると、我々はそれを普段の生活の中で聞いている。しかしそれをスピーカで再生しようとすると限界があるのでは。

 

今後の課題

 

中島

皆さんの話をいろいろ聞きながら今後どこを我々がやっていくべきか考えた。

日常生活の中で大きな音が出る(大きな音で聞く)チャンスは少ない。逆にどれだけ小さな音を大事にするかが大切なのでは。

マイクで小さい音をいかに処理するか。再生側でも、小さな音や低い音をいかに出すか。

 

高松

アンプのSNやひずみ率を良くするということは、小さい音にうんとお金を掛けることである。アキュフェーズではひずみ率が-135dBまで測定できるシステムを20年前に作ったが、いまだに使っている。当時の高性能(高価な)なシバソクの歪率計を2セット使って実現した。

 

中島

音の本質を勉強しようとNHラボを作ったが、会社にするといろいろ制約がある。

このチャットの会だけは制約なしに「良い音」の基本を考えていきたい

今後の課題として考えていることは

 1)呼吸球が理想か? 本当に呼吸球でよいのかよくわからない。

 2)無限大バッフルで平面波を作ることも考えられるが、限界があるのではないだろうか?

なるべく経済や環境に影響されないものを考えている。

 

皆様からの良い提案をお待ちしています。

 

以上